1.古本屋

 このサイトを作ることになってから、どんなことを書こうかいろいろ考えていました。わたしの体験談、告白っていうとなんか重々しいっていうか、もっとさっぱりとした感じでかきたいなって。いくつか書いてみたいことはあるんだけど、なにからかこうか。あっ、そんなあぶないこといっぱいしているわけじゃないよ! 

 たぶん、わたしのことを知ってもらうためにも、最初に書くべき話は、これしかないなって思う。このときの体験が、わたしのその後を大きく変えたから。いま思い出してもからだがふるえちゃう。でもね、いざ書こうと思っても、書けなかった。はずかしくて。これを読んでいる人は、誰もわたしのこと知らないと思う。街ですれちがってもわたしだって、誰にもわからない。でも、やっぱりはずかしいよ。だから、なかなか書けなかった。

 このまえ、「ひで」が最初の日記をアップして、すっごいこと書いてるなって思った。それで、わたしもだいぶ勇気が出てきた。この話は、「ひで」にはまえに少しだけ話したことあるの。でも詳しいことは言ってない。だから、「ひで」に読まれるのがいちばんはずかしいかも。でも、とにかく書いてみます。なるべく正直に、あのときのことを思い出しながら。

 そのころわたしはまだ20才で、大学生でした。暑い夏が終わって秋ももうすぐという頃、私は近所の古本屋でバイトを始めました。平日は午後5時から7時、土曜日はお昼から7時までひとりで店番をしていました。小さな店で、古本といっても、価値のある古書なんて全然なくて、大半がマンガ本とペーパーバックの小説やビジネス書、そしておきまりのHな本です。お店は、これでやっていけるのかな?と思うほど暇だったので、私は年末までに「徳川家康」を全巻読み終えてしまったくらいです。

 私の仕事は、5時にお店に行き、店番をしているオーナーの奥さんと交代。レジにすわってひたすらお客さんを待つのです。たまに書棚の整理やかんたんな拭き掃除なんかもしました。それと、古本を売りに来るお客さんも結構いて、そう言うときはパラパラと本のなかを確かめて、とくにひどい汚れやページが破れていないときは、買い取り価格を決めて買い取ります。だいたい相場が決まっているので、なれると簡単です。マンガや小説は何十円にしかなりません。全巻そろった大作は、マンガでもそれなりの値段で買い取ります。買い取った本は裏表紙の内側に鉛筆で値段を書き、ノートに記録をつけてから書棚にならべます。マンガとH本は透明なビニルで包んで、立ち読みできないようにしてから並べます。わたしは、バイトの特権でビニルに包む前にゆっくり読めました。「タッチ」とか「銀河鉄道999」とか、全巻制覇しちゃった。あと、「ドラゴンボール」なんかも。

 店は深夜までやっていました。店長のおじさんが7時からわたしと交代します。それでも大抵6時半ころからやってきて、ちょっと世間話をしたあと、もう帰っていいよっていってくれました。お給料はちゃんと7時までの分をくれたし、やさひい人でした。わたしは大好きな読書もできたしで、最高のバイトだったぁ。しかも、おなかがすいただろうって言って、おじさん、菓子パンやケーキを買ってきてくれることもありました。ふたりでそれを食べながら世間話して、わたしは7時前には店を出て家に帰りました。

 たぶん大学生だと思います。もしかしたら私と同じ学校かも? 若い男の人がぴったり一週間おきに店に来ていました。彼は大抵小説を何冊かとマンガを何冊か買っていきました。そして月に一度、段ボール箱に本をいっぱいに詰めて売りにきました。ほとんどがうちの店から買っていった本でしたが、たまに新書もまじっていました。それと、Hな本がかならず一冊はいってました。これはどこかで新品を買ったものだと思います。こんなところで働いているので、その手の本の中身を点検するのはもう慣れっこでしたが、わたしがページをめくってパラパラと本をめくっているあいだ、彼はバツ悪そうにしながら、そこらの本棚をみているふりをしていました。ふりをしていたというのは、だってあきらかにわたしのほうを気にしているのがわかるんだもん。

 彼は昔からの常連らしく、店長や奥さんとも親しかったようです。なかなかの好青年だとふたりはよく話していました。彼の読書の趣味は多岐に渡っていて、きっと文字が書いてあればなんでもいいんだろうと思います。マンガも少年ものから少女マンガまでなんでも読みました。でもHな本だけはいつも同じジャンルのものしか読まないようでした。

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